子宮頸がんについて

子宮頸がんのできる場所や原因、子宮頸がんまでの道のり、そして子宮頸がん検査の診断名から進行期分類までわかりやすく説明します。

子宮頸がんのできる場所

子宮頸がんは子宮の入り口の子宮頸部(しきゅうけいぶ)というところにできるがんです。子宮頸部は膣の奥の子宮の入り口の部分です。

 

一般的に子宮といえば、赤ちゃんが育つところ、と思う方も多いかと思います。赤ちゃんが育つところは子宮体部といいます。

 

子宮とは、この子宮頸部と子宮体部でできていて、それぞれ違ったホルモンやウイルスなどの理由でがんになってしまうことがあります。

 

このサイトでは、子宮頸がん、特に膣にとても近い部分の子宮頸がんについて説明していきます。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんになってしまう原因は、セックスなどの刺激を受けて細胞が変異をしてしまうなどと考えられていた時代もありましたが、今は子宮頸がんの多くの原因はHPVというウイルスの感染によるものだということがわかってきました。

 

HPV(Human Papilloma Virus)はヒトパピローマウイルスというもので、その種類は200種類以上あると言われています。一般的にはイボの原因になるウイルスです。

 

そのHPVのうち、15種類以上が子宮頸がんに関係していることがわかっています。これらの子宮頸がんに関係しているHPVを「ハイリスク型HPV」と言います。それが、子宮の入り口にある傷より組織の中に入り込むことによって感染してしまうのです。

 

 

HPV感染からがんになるまで

ハイリスク型HPVに感染したからといってすぐにがんになるわけではありません。感染した人のうち90%くらいは、その人の免疫力によって自然に排除されていきます。

 

もしも、持続感染がおこり免疫によって排除されなかった時に、HPVは細胞の核の中に入り込み、細胞は異形を示すようになってしまいます。

 

この状態で細胞の変化が出てくるので、細胞診(さいぼうしん)という検査をすると、HPVに感染している細胞を見つけることができるのです。

 

この段階やもう少し進んだ段階でがんに向かって変化を始めている細胞を見つけることができたら、がんになるまえに処置をすることができるのです。

HPV感染からがんになるまでの細胞診検査の診断名と対処

ベセスダシステム

 

子宮頸がん細胞診には「ベセスダシステム」という、細胞診断と治療基準のガイドラインがあります。これは、世界共通のガイドラインで、どこの国でも臨床医が迷うことなく同じ基準の診断と治療が受けられるようにという目的で作られました。

とても特別な用語ですが、このまま検査結果として検査を受けた皆さんにも伝えられるので、用語説明をします。

ベセスダシステムはあくまでも子宮頸がん関連の細胞の変化を診断するために使う用語なので、ハイリスクHPV感染とそれに伴う扁平上皮細胞という子宮頸部の細胞の変化をメインに作られています。この中でよく使われる「上皮内病変」というのはそういう意味で、子宮筋腫や子宮内膜症など、「上皮」におこらないのその他の子宮の疾患に関しては診断対象にはなっていないという意味を含めています。

 

 

NILM(ニルム)

 

NILMはNegative for Intraepithelial Lesion or Malignancy の頭文字をとったもので、「上皮内病変もしくは悪性がありません」と言う意味です。

つまり、子宮頸がんに心配な細胞は見られませんと言う意味です。

子宮頸がんの心配はないけれど、カンジダやトリコモナス、細菌性膣症、萎縮性膣炎、膣炎などの変化がある場合も、NILMになります。

 

NILMの細胞とカンジダがみられます。

 

 

ASC-US(アスカス)

 

ASC-USはAtypical Squamous Cells of Undetermined Significance の頭文字をとったもので、「意義不明な異型扁平上皮細胞」と言う意味です。

つまり、正常とは言い切れない異型細胞が見られているけれど、それがHPV感染による変化なのか、その他の炎症性変化(カンジダや膣炎などにより細胞が反応している状態)なのか、区別することができない細胞が見られるときに、ASC-USが使われます。

 

細胞だけではHPVの感染があるかどうか確定できないので、ハイリスクHPVの遺伝子検査をして確認をするため、検診結果では「要精密検査」や「要医療機関受診」という区分になります。

 

でも、HPVの感染があるのかないのかをはっきりさせるためなので、「がん」には程遠い状態です。不安にならずにHPVの遺伝子検査を受けて感染の有無をはっきりさせましょう。

 

また、「ASC-USで精密検査を受けに行ったら何もないと言われた。診断が間違っていたのでは?」と言われる方が多くいます。これは診断ミスなのではなく、複数の理由が考えられますが、以下の2つの理由がほとんどです。

  1. 最初に検査から精密検査までの間に、免疫力によってHPVが排除、もしくは炎症が改善されて自然治癒したために、ASC-USと診断された異型細胞がなくなった。
  2. とても少ない量のASC-USの細胞は子宮頸部の表面的にだけある場合が多いので、最初の採取の際にすべて擦れて取れてしまった。

ASC-USで再検査になった場合は「6ヶ月後に再検査」など再受診の目安の時期を言われる場合があります。その時期を守って再受診しましょう。

ASC-USの細胞はこのような細胞です。

 

 

LSIL(ローシル)

 

LSILはLow-grade Squamous Intraepithelial Lesion の頭文字をとったもので、「軽度の扁平上皮病変が見られます」と言う意味です。

つまり、ハイリスクHPVに感染していて、その細胞変化の度合いが軽度な状態です。

ハイリスクのHPVに感染しているので、経過観察をしていくことはとても重要ですが、まだ子宮頸がんからはほどと段階で、まだ体の免疫力でHPVが十分排除されていきます。

 

80〜90%の女性は一生のうちに一度はHPVに感染すると言われている時代です。HPVに感染しているからといって必ずがんになるわけでもありません。

 

医師による経過観察が必要なため、検診結果では「要精密検査」や「要医療機関受診」という区分になります。

医師の指示通りに経過観察の検査を受け、HPVが排除されて細胞が元の元気な状態に戻っていることを確認しましょう。

 

LSILの細胞はこのような細胞です。

 

 

ASC-H(アスクエイチ)

 

ASC-HはAtypical Squamous Cells, cannot exclude a High grade squamous intraepithelial lesionの頭文字をとったもので、「高度異形成を否定できない異型扁平上皮細胞」と言う意味です。

 

つまり、ハイリスクHPVの感染が見られ、次のHSILというがんの一歩手前、もしくは初期のがんを否定できない細胞が見られるけどはっきりと診断できる十分な細胞が見られない時にASC-Hが使われます。

 

ASC-Hになると、がん寄りの診断になってきます。

 

HSIL(ハイシル)

 

HSILはHigh Grade Squamous Intraepithelial Lesionの頭文字をとったもので「高度の扁平上皮病変がみられます」と言う意味です。

 

細胞の変化が中等度から高度(中等度から高度異形成)、上皮内癌(臨床期分類0期)、微小浸潤癌(臨床期分類Ia期)を含む前浸潤癌病変です。医師による検査と治療が必要なため、検診結果では「要精密検査」や「要医療機関受診」という区分になります。

 

HSILの診断がつくと、組織診断をして浸潤癌がない確認をします。この検査で、浸潤癌が見つかることも少なくはありません。

 

子宮の入り口を円錐状に切り取る、円錐切除術というのが行われ、ハイリスクHPVの感染があり、上皮組織ががんになり始めている部分を切り取ってしまうこともあります。

 

円錐切除は子宮が膣に出ている部分を切り取るだけなので、将来赤ちゃんができる部分には傷ができないので、基本的にまだ妊娠することは可能です。

 

HSILはLSIL寄りのまだがんから少し離れているものから、すでにがん細胞が表面的に出来始めている状態まで広い範囲が含まれますが、とても重要な診断です。HSILといわれたら、確実に葉山に受診しましょう。

 

HSILの細胞はこのような細胞です。

 

 

SCC(エスシーシー)

 

SCCはSquamous Cell Carcinomaの頭文字をとったもので、「扁平上皮癌」と言う意味です。

扁平上皮癌(臨床期分類のIb以上)は浸潤がんになります。すぐに受診し、治療を始めましょう。

 

扁平上皮癌の細胞はこのような細胞です。

 

 

AGC(エージーシー)

 

AGCはAtypical Glandular Cellsの頭文字をとったもので、「異型腺細胞」と言う意味です。

 

子宮頸がんの10〜20%に起こる腺細胞の異常で、子宮頸部の奥の方の細胞がHPV感染を含め何らかの反応もしくは異常を示しているときに使います。

 

また、閉経後の女性の子宮頚部細胞診に子宮体部の細胞が見られた場合もAGCが使われます。子宮体がん検診の対象になってきます。

子宮頸がんの進行期分類

0期、Ia期は子宮頸部円錐切除(えんすいせつじょ)術での処置が多く、ほとんどの場合で処置後に妊娠、出産は可能です。

 

0期:上皮内癌。がん細胞が上皮内にとどまっている。

Ia期:微小浸潤癌。がん細胞が基底膜を超えて浸潤が始まっているが、5mmいないの浸潤

 

Ib期以降は浸潤癌(しんじゅんがん)なので、子宮を残すことは難しくなってきます。

 

Ib期:5mm以上の浸潤が見られるが、腫瘍は子宮頸部内にとどまっている。

II期:子宮頸部よりも腫瘍が広がっているが、膣壁の下部1/3には達していない。

III期:腫瘍が子宮の下部1/3に達している。骨盤壁まで達していることもある。

IV期:腫瘍が膀胱や直腸、肝臓など他の臓器に転移している。